■所在地 群馬県勢多郡東村大字草木86−1他
■主体構造 鉄骨鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)・鉄筋コンクリート造
■階数 地上1階
■敷地面積 約70,000.00u
■建築面積 約3,500.00u
■延床面積 約3,500.00u
■主要用途 美術館・レストラン・自然観察小屋
★設計主旨
■設計の気持ち
設計にあたり東村へ訪れ、実際に計画敷地に立ち、富弘美術館にも訪れた。
早朝、計画敷地の山に登ってみるとまだ新しい鹿のフンが散らばっており国道のすぐそばまで野生の鹿が来ていることに興奮した。
朽ち落ちた枝、苔むした木々、葉の間をぬって射し込む淡く白い光、人の手の加わっていないものの美しさを感じた。
そして星野氏の自然のあるがままの姿を愛おしむ気持ちと、懸命に生きる姿に涙が止まらなかった。
来館者には日常の複雑なことを忘れありのままの自分に戻り、むき出しの感性で星野氏の作品と東村の自然に触れて欲しいと願う。それが設計者の義務だと感じる。
■建物
木々の緑、湖の青、自然の色に違和感無く溶け込むよう、全ての面をコンクリート打ち放し仕上とする。
コンクリート打ち放しはシンプルな形状を保てば限りなく天然石に近い表情を持ち、これに東村の産物である御影石を加えることで、よりおごそかな空間を創り出す。
更に、建物が自然の風景からはみ出した存在にならないよう、装飾的なことは避ける。
シンプルな形状だが、一歩中へ入ると様々な空間が現れ、内外のギャップが更に建物内の空間に劇的な物語りを感じさせる。
ここでの建物は装置・しかけであると考える。
■敷地選定
3カ所の計画敷地から風景を眺めてみると、高いところから見下ろした景色よりも平地で見渡す景色の方がより強く自然に囲まれた事への感動を受けた。
その中でも南側の一番小さな敷地からの景色が特に素晴らしいと感じ、そこから美しい景色とそれに溶け込む美術館を眺められるよう、レストランを計画した。
車や人混みなどのない自然の風景だけを切り取って見ることが出来るよう、湖に近い場所に湖にせり出す形で美術館を配置し、その先端には巨大な展望室を持たせた。
■山からのお裾分け
たとえ豊富にある自然の中の一部であっても、山は出来る限り今ある状態に近い形で残したいと強く願う。
人が入れば様子も変わってしまうだろうが、そうして人が心に感じる何かは、自然からのお裾分けであることを多くの人に知って貰いたい。
そして来館者の明日からの日常に少しでも明るい影響を与えられたら素敵だと思う。
道端の花にも愛おしさを感じる作者の美術館と景色の美しい村とが自然を尊重する姿は貴重なものとして来館者の心に残るだろう。
それは人々の尊敬を生むこれからの建物であることを強く訴えたい。